息子へ ~3~
いま、あなたは小学校4年生。
まだまだしばらくは9歳だけど、そろそろ早生まれの影響もほとんどなくなって、みんなとおんなじになれてるかな。
授業にも自然についていけるようになって、自分でできることも増えてきたかな。
ママとパパはね、1998年の、10月11日に入籍したの。
入籍っていうのはね、結婚ってことよ。
お役所に行って、「婚姻届」っていう紙に、パパとママは結婚して夫婦になりますって書いて、出すのよ。
あなたも、大きくなったら素敵なお嫁さんを見つけて、おなじように結婚する日がきっと来るからね。
でもきっとね、あなたならその素敵なお嫁さんと、「結婚式」を挙げられるんじゃないかなって思うよ。
だけど、結婚式ってね、ちょっとお金がかかるんだ。
ママもパパもね、結婚したときにちょっと理由があって、お金がぜんぜん無かったの。
だから、一番安い結婚指輪だけを買って、それでおしまいだった。結婚式なし。
どうしてお金が無かったのかは、また今度ゆっくり話すね。
ママ、すっごくあこがれてたんだけどね…ウェディングドレス。教会でライスシャワー。ブーケは手作りして…なんてさ。仲のいい友達に、「おめでとう」って言ってもらえるのを、楽しみにしてた。
披露宴っていうのもあるんだけど、それも、すごく憧れてたよ。
大きな大きなケーキを、ナイフで二人一緒に切るのよ。
親戚のお姉さんやお友達、いろんな披露宴に行く度に、いつか私もあんな風に…って思ってた。
綺麗なドレスや、着物を着たり、みんなのテーブルのろうそくを灯して静かに歩いたり…
みんなすごく綺麗で、すごく幸せそうで。
結婚したらみんなあんなふうになれるんだ、って信じてた。
女の子なら、一度くらいは夢見ることあるんじゃないかな、って思う。
綺麗な花嫁さんを見るたびにね。
だからママも、そんな「かわいいお嫁さん」に憧れる、普通の女の子だったのよ。
今じゃ想像できないかな?
ずっとずっと歳取っちゃって、もともと顔だってちっとも可愛くないものね。
あなたは、大切な人を、一番綺麗で幸せな舞台に立たせてあげてね。
きっとよ。
あなたなら、ちゃんとお嫁さんを幸せにしてあげられるから。
誰よりも幸せな家庭を、つくっていけるから。
だからママね、あなたが結婚するときまでずっとお金に困らないように、ちゃんと貯金を残しておいてあげるつもり。
…パパやおばあちゃんが、ママの残したお金を使ってしまわないように、少しでもきちんとあなたの手に渡るように、ちゃんと弁護士さんに相談しておくから。
ママはもう、あなたのために残してあげられることがたったそれだけしかない。
まだ小さいあなたに、残してあげられるプレゼントが「お金」だなんて、なんて悲しいんだろう。
でも、それしかないの。
本当に、ごめんね、こんなママで。
お金をあげてごまかす存在にはなりたくなかったんだけど…結果的にはそうなっちゃうね。残念。
もっともっとたくさんお話をして、たまに、お料理も教えてあげたりしたかったな。
あなたはママの作るふわふわのスクランブルエッグが大好物だから、上手に出来るようになるまで、あなたにコツを教えてあげたかった。
星が見えるような綺麗な夜空が眺められる旅館で、一緒に温泉に浸かったりしたかったなあ。
あなたは、子どもの割にことのほか温泉が好きで、「はぁ~極楽、極楽」なんて言う子だものね。
お習字も、もっともっと教えてあげたかったな。
あなたは、漢字を丁寧に書くと、とっても上手だものね。ママ、子供の頃全国書道コンクールで銀賞取ったことがあったけど…えへへ、これは自慢よ?
だけど、あなたならひょっとして、このまま練習を続けてたら金賞だって取れたかもよ?
あなたは、本を読むのが大好きだから、もっともっと図書館に連れて行ってあげたかったなあ。
ズッコケ三人組のシリーズ、まだ全部読んでないよね。読むのがとっても早いから、この夏休みにも全シリーズ読破できたかもしれないのに…
パパは、あなたを図書館に連れて行ったことなんか一度もないものね。
ママ、なんとかパパに最後の手紙でお願いしてみるけど、もしも連れて行ってもらえなかったら、ごめんね。ママのお願いは、残念だけどきっと、パパには聞いてもらえないから…
あなたのこと、どんな小さいことでもいいから、もっともっと見ていたい。
毎日成長し続けるあなたを、そばで見ていたい。
あなたがいつか、ママのことを「うるさい存在」って思うようになっても、それも大切な成長の一歩だと受け止めたかった。
そしてそんなときには、そっとあなたのこと、見守っていられる存在でいたかった。
おいしいご飯を作って、綺麗に制服のワイシャツをアイロンがけして…
「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」を毎日言いたかった。
困ったとき、苦しいとき、悩んだとき、真っ先にあなたが頼れるような、そんな存在でいたかった。
それこそ、あなたにこの世で一番大切な人ができて、新しい家庭を築く、その日まで…
あなたが選んだ大切な人だもの、私も、同じように大切にしてあげられる自信は、あったのよ。
嫁姑、ってなんだか難しい関係らしいけど、ママは、自分が家庭に恵まれてこなかったから、せめてあなたの家庭だけは、あふれるぐらいの幸せでいて欲しいと思ってた。
誰よりも大切なあなた。
まだまだ、こんな小さなことばかりじゃなくもっともっと沢山のことをしたかった。
もう大丈夫、もう私がいなくても平気ねって、そう思える日が来るまで、あなたを支えて、応援していたかった。
こんな病気になってしまって、本当にごめん。
あなたは何も悪くないのに、ママのせいで寂しい思いをすることになってしまって、ごめんね。
だから、せめて私の残すお金を大切に使ってね。
もしかしたらあなたの知らないところで、そのお金すらも全部なくなってしまってることが、あるかもしれない。
でも、ママが必死に残そうとしたことだけは、どうか知っていてね。
あなたが中学を受験したいと言ったときにも、お金がちゃんと降りる。
あなたが大学院を受験したいと言ったときにも、お金がちゃんと降りる。
そして今言ったように、大切な人と結婚式を挙げたいならそのためのお金がちゃんとある。
学資保険にも入っているし、あなたのための口座にお金をきちんと残してる。
あなたには、お金なんかで絶対苦労しないでほしいから。
ママが味わって来たような、つまらないことで余計な苦労をしてほしくないから。
どこまで守りきれるかわからないけど、どうか少しでもあなたの手に渡るように、ママは祈ってます。
どうか、私の残すお金を、あなたがきちんと自分のために使えますように。
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まだまだしばらくは9歳だけど、そろそろ早生まれの影響もほとんどなくなって、みんなとおんなじになれてるかな。
授業にも自然についていけるようになって、自分でできることも増えてきたかな。
ママとパパはね、1998年の、10月11日に入籍したの。
入籍っていうのはね、結婚ってことよ。
お役所に行って、「婚姻届」っていう紙に、パパとママは結婚して夫婦になりますって書いて、出すのよ。
あなたも、大きくなったら素敵なお嫁さんを見つけて、おなじように結婚する日がきっと来るからね。
でもきっとね、あなたならその素敵なお嫁さんと、「結婚式」を挙げられるんじゃないかなって思うよ。
だけど、結婚式ってね、ちょっとお金がかかるんだ。
ママもパパもね、結婚したときにちょっと理由があって、お金がぜんぜん無かったの。
だから、一番安い結婚指輪だけを買って、それでおしまいだった。結婚式なし。
どうしてお金が無かったのかは、また今度ゆっくり話すね。
ママ、すっごくあこがれてたんだけどね…ウェディングドレス。教会でライスシャワー。ブーケは手作りして…なんてさ。仲のいい友達に、「おめでとう」って言ってもらえるのを、楽しみにしてた。
披露宴っていうのもあるんだけど、それも、すごく憧れてたよ。
大きな大きなケーキを、ナイフで二人一緒に切るのよ。
親戚のお姉さんやお友達、いろんな披露宴に行く度に、いつか私もあんな風に…って思ってた。
綺麗なドレスや、着物を着たり、みんなのテーブルのろうそくを灯して静かに歩いたり…
みんなすごく綺麗で、すごく幸せそうで。
結婚したらみんなあんなふうになれるんだ、って信じてた。
女の子なら、一度くらいは夢見ることあるんじゃないかな、って思う。
綺麗な花嫁さんを見るたびにね。
だからママも、そんな「かわいいお嫁さん」に憧れる、普通の女の子だったのよ。
今じゃ想像できないかな?
ずっとずっと歳取っちゃって、もともと顔だってちっとも可愛くないものね。
あなたは、大切な人を、一番綺麗で幸せな舞台に立たせてあげてね。
きっとよ。
あなたなら、ちゃんとお嫁さんを幸せにしてあげられるから。
誰よりも幸せな家庭を、つくっていけるから。
だからママね、あなたが結婚するときまでずっとお金に困らないように、ちゃんと貯金を残しておいてあげるつもり。
…パパやおばあちゃんが、ママの残したお金を使ってしまわないように、少しでもきちんとあなたの手に渡るように、ちゃんと弁護士さんに相談しておくから。
ママはもう、あなたのために残してあげられることがたったそれだけしかない。
まだ小さいあなたに、残してあげられるプレゼントが「お金」だなんて、なんて悲しいんだろう。
でも、それしかないの。
本当に、ごめんね、こんなママで。
お金をあげてごまかす存在にはなりたくなかったんだけど…結果的にはそうなっちゃうね。残念。
もっともっとたくさんお話をして、たまに、お料理も教えてあげたりしたかったな。
あなたはママの作るふわふわのスクランブルエッグが大好物だから、上手に出来るようになるまで、あなたにコツを教えてあげたかった。
星が見えるような綺麗な夜空が眺められる旅館で、一緒に温泉に浸かったりしたかったなあ。
あなたは、子どもの割にことのほか温泉が好きで、「はぁ~極楽、極楽」なんて言う子だものね。
お習字も、もっともっと教えてあげたかったな。
あなたは、漢字を丁寧に書くと、とっても上手だものね。ママ、子供の頃全国書道コンクールで銀賞取ったことがあったけど…えへへ、これは自慢よ?
だけど、あなたならひょっとして、このまま練習を続けてたら金賞だって取れたかもよ?
あなたは、本を読むのが大好きだから、もっともっと図書館に連れて行ってあげたかったなあ。
ズッコケ三人組のシリーズ、まだ全部読んでないよね。読むのがとっても早いから、この夏休みにも全シリーズ読破できたかもしれないのに…
パパは、あなたを図書館に連れて行ったことなんか一度もないものね。
ママ、なんとかパパに最後の手紙でお願いしてみるけど、もしも連れて行ってもらえなかったら、ごめんね。ママのお願いは、残念だけどきっと、パパには聞いてもらえないから…
あなたのこと、どんな小さいことでもいいから、もっともっと見ていたい。
毎日成長し続けるあなたを、そばで見ていたい。
あなたがいつか、ママのことを「うるさい存在」って思うようになっても、それも大切な成長の一歩だと受け止めたかった。
そしてそんなときには、そっとあなたのこと、見守っていられる存在でいたかった。
おいしいご飯を作って、綺麗に制服のワイシャツをアイロンがけして…
「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」を毎日言いたかった。
困ったとき、苦しいとき、悩んだとき、真っ先にあなたが頼れるような、そんな存在でいたかった。
それこそ、あなたにこの世で一番大切な人ができて、新しい家庭を築く、その日まで…
あなたが選んだ大切な人だもの、私も、同じように大切にしてあげられる自信は、あったのよ。
嫁姑、ってなんだか難しい関係らしいけど、ママは、自分が家庭に恵まれてこなかったから、せめてあなたの家庭だけは、あふれるぐらいの幸せでいて欲しいと思ってた。
誰よりも大切なあなた。
まだまだ、こんな小さなことばかりじゃなくもっともっと沢山のことをしたかった。
もう大丈夫、もう私がいなくても平気ねって、そう思える日が来るまで、あなたを支えて、応援していたかった。
こんな病気になってしまって、本当にごめん。
あなたは何も悪くないのに、ママのせいで寂しい思いをすることになってしまって、ごめんね。
だから、せめて私の残すお金を大切に使ってね。
もしかしたらあなたの知らないところで、そのお金すらも全部なくなってしまってることが、あるかもしれない。
でも、ママが必死に残そうとしたことだけは、どうか知っていてね。
あなたが中学を受験したいと言ったときにも、お金がちゃんと降りる。
あなたが大学院を受験したいと言ったときにも、お金がちゃんと降りる。
そして今言ったように、大切な人と結婚式を挙げたいならそのためのお金がちゃんとある。
学資保険にも入っているし、あなたのための口座にお金をきちんと残してる。
あなたには、お金なんかで絶対苦労しないでほしいから。
ママが味わって来たような、つまらないことで余計な苦労をしてほしくないから。
どこまで守りきれるかわからないけど、どうか少しでもあなたの手に渡るように、ママは祈ってます。
どうか、私の残すお金を、あなたがきちんと自分のために使えますように。
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